
先日記事にした2025年10月14日のWindows 10サポート終了に伴う古いPCのLinux化による延命策について、今回の記事では、手元にある3台のWindows 10 PC(Studio Desktop D540, ThinkCentre M715q, CF-RZ5)を例に、どれをLinux化して延命させるべきか、その活用法から注意点まで検討してみます。
なぜ今、PCをLinux化するのか?
先日の記事のおさらいになりますが、Windows 10のサポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなり、ウイルス感染や情報漏洩のリスクが非常に高まります。 もちろん、PCが動かなくなるわけではありませんが、インターネットに接続して使用するのは非常に危険です。
ここでLinuxが輝きを放ちます。LinuxはWindowsに比べて軽量で、システム要件が低いため、古いPCでもサクサク快適に動作します。
さらに、セキュリティ性が高いことでも知られており、サポート切れの心配もありません。
つまり、Linuxをインストールするだけで、古いPCが安全で実用的なマシンとして生まれ変わるのです。
Linux化したPCでできることは実に多彩です。
- ウェブブラウジングやメール、動画視聴: 日常的なインターネット利用は全く問題ありません。
- オフィススイートの利用: LibreOfficeなど、Microsoft Officeと互換性のある無料のオフィススイートが利用でき、文書作成や表計算も可能です。
- プログラミング学習: 開発環境の構築が容易なため、プログラミングの学習に最適です。
- ファイルサーバーやメディアサーバー: 自宅のネットワーク内でファイルや動画を共有するサーバーとして活用できます。
- クリエイティブな作業: GIMP(画像編集)やInkscape(ドローソフト)など、無料で高機能なクリエイティブツールが揃っています。

どのPCをLinux化すべきか?3台の候補を徹底比較
それでは、本題である3台のPC、
- Studio Desktop D540(2代前のメインPC:デスクトップPC、サイズがごつい)
- ThinkCentre M715q(1代前のメインPC:ミニPC、サイズはコンパクト)
- CF-RZ5(仕事用に中古で購入したサブPC:ノートPC、サイズはコンパクト)
これは各々Linux化した場合、それぞれどのような特徴があり、どのような用途に向いているのかを見ていきましょう。
候補PCのスペック概要
まずは、各PCの基本的なスペックを確認しておきましょう。
| モデル名 | タイプ | CPU | メモリ | ストレージ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Dell Studio Desktop D540 | デスクトップ | Intel Core 2 Quad Q8200 など | DDR2 最大8GB | HDD | 2010年頃のミドルタワーPC。拡張性は高い。 |
| Lenovo ThinkCentre M715q | 小型デスクトップ | AMD Ryzen 5 PRO 2400GE | DDR4 8GB~ | SSD/HDD | 手のひらサイズの超小型PC。省スペースで静音。 |
| Panasonic CF-RZ5 | 2-in-1 ノートPC | Intel Core m5-6Y54 など | LPDDR3 4GB/8GB | SSD | 軽量・頑丈なモバイルPC。タッチパネル対応。 |
( ThinkCentre M715qは静音と記載していますが、確かに購入当初は静かでした。ただ、何年か使用している内にファンの音が結構うるさくなり、いろいろ対策も試してみたのですが改善せず、数年前に現在メインPCとして利用しているBeelink製のミニPCに変更しております)
各PCをLinux化した場合の比較表
| 項目 | Studio Desktop D540 | ThinkCentre M715q | CF-RZ5 |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | ホームサーバー、学習用、デスクトップPCとしての普段使い | 省スペースサーバー、リビングPC、メインPC | モバイルPC、タブレット的利用、プレゼン用 |
| 特徴 | - 拡張性が高く、パーツ交換が容易 - 性能は低いが、サーバー用途なら十分 - 設置場所に困る可能性がある |
- 非常にコンパクトで設置場所を選ばない - 比較的新しいCPUで性能が高い - 拡張性は限定的 |
- 圧倒的な軽さと堅牢性 - タッチパネルやタブレットモードが利用可能 - 画面が小さく、長時間の作業には不向き |
| メリット | - メモリ増設やストレージ追加が簡単 - 古いパーツを流用できる - 安定したサーバー運用が可能 |
- 高いパフォーマンス - 省電力で静音性が高い - 持ち運びも可能 |
- どこにでも持ち運べる携帯性 - Linuxでもタッチ操作を楽しめる - バッテリー駆動時間が長い |
| デメリット | - CPU性能が低く、重い処理は苦手 - 消費電力が大きい - サイズが大きく場所を取る |
- メモリやストレージの増設に制限がある - GPU性能は内蔵グラフィックスのみ - 拡張ポートが少ない |
- CPU性能はモバイル向けで控えめ - メモリ増設が不可 - Linuxでのタッチ関連の動作が不安定な場合がある |
1. サーバー用途の王道:Studio Desktop D540
このデスクトップPCは、年式が古くCPU性能も高くありませんが、Linux化によって新たな命を吹き込むのに最適な一台です。
どんなことができるか その大きな筐体と拡張性の高さを活かし、「ホームサーバー」として活用するのが最もおすすめです。ファイルサーバー(NAS)を構築すれば、家庭内の写真や動画、音楽ファイルを一元管理し、スマホや他のPCからいつでもアクセスできるようになります。また、Webサーバーを立ててブログを公開したり、VPNサーバーを構築して外出先から安全に自宅のネットワークにアクセスすることも可能です。
どういうときに活用できるか 常に電源を入れておくサーバーとして、その存在感をいかんなく発揮します。データのバックアップ先として、あるいは家族みんなで使う共有ストレージとして、24時間365日活躍してくれるでしょう。消費電力は気になりますが、その分、安定した運用が期待できます。
メリット・デメリット 最大のメリットは、メモリ増設やハードディスクの追加が非常に簡単なこと。 将来的に容量が足りなくなっても、容易に拡張できます。一方で、CPU性能の低さから、動画のエンコードなど重い処理には向きません。また、その大きさから設置場所を選ぶのがデメリットと言えるでしょう。
2. 省スペース・高性能な万能選手:ThinkCentre M715q
手のひらサイズの筐体に、比較的新しいRyzenプロセッサーを搭載したこのモデルは、Linux化することでそのポテンシャルを最大限に引き出せます。
どんなことができるか そのコンパクトさと静音性を活かして、テレビの横に置く「リビングPC」として最適です。大画面で動画を楽しんだり、Webブラウジングをしたりと、家族みんなで使うPCとして活躍します。また、Ryzen 5 PRO 2400GEは十分な性能を持っているため、プログラミングや文書作成など、日常的な作業をこなすメインPCとしても十分に通用します。
どういうときに活用できるか 置き場所に困らないため、書斎のメインPC、リビングの共有PC、あるいは小規模なオフィスのクライアントPCなど、様々なシーンで活用できます。その高いパフォーマンスは、Windows 10のサポート終了で手放すにはあまりにもったいない逸材です。
メリット・デメリット 省スペース、省電力、高性能と三拍子揃っているのが最大のメリット。Linuxをインストールすれば、起動も動作も非常に高速で、ストレスのないPCライフを送れるでしょう。デメリットは、その小ささゆえに拡張性が限られる点。メモリやストレージの増設は可能ですが、デスクトップPCほどの自由度はありません。
3. 外出先でも活躍するモバイルの雄:CF-RZ5
軽量・頑丈で知られるLet's Noteシリーズの中でも、特に携帯性に優れたこの2-in-1モデルは、Linuxとの相性も良好です。
どんなことができるか その軽さを活かして、外出先での作業に最適です。カフェでブログを書いたり、大学でレポートを作成したりといった用途にぴったり。また、ディスプレイを回転させればタブレットのようにも使えるため、電子書籍を読んだり、プレゼンテーションで使ったりといった活用も可能です。
どういうときに活用できるか 常にカバンに入れて持ち歩き、必要な時にサッと取り出して使う、そんなアクティブな使い方にマッチします。バッテリー駆動時間も長いため、電源のない場所でも安心して作業に集中できます。
メリット・デメリット 最大のメリットは、何と言ってもその圧倒的な携帯性。Linuxは軽量なOSなので、Core mプロセッサーでも快適に動作します。タッチパネルも多くのLinuxディストリビューションでサポートされており、新しい操作体験が楽しめます。 ただし、Linux上でのタブレットモードへの自動切り替えや、一部の特殊キーが正常に動作しない可能性もあるため、事前の情報収集が必要です。 また、メモリがオンボードで増設できない点は大きなデメリットです。
Linux化する際の注意点
どのPCを選ぶにしても、Linuxをインストールする際にはいくつか共通の注意点があります。
- データのバックアップ: Linuxをインストールする前に、必要なデータは必ず外部ストレージなどにバックアップしてください。インストールプロセスで、既存のデータはすべて消去されます。
- ディストリビューション選び: LinuxにはUbuntu、Linux Mint、Zorin OSなど様々な種類(ディストリビューション)があります。初心者向けで情報が豊富な「Linux Mint」や「Zorin OS」あたりから試してみるのがおすすめです。
- ライブUSBで試す: 多くのディストリビューションは、PCにインストールすることなくUSBメモリから起動して試せる「ライブUSB」機能を提供しています。 まずはこの機能を使って、Wi-Fiやサウンド、タッチパネルなどのハードウェアが正常に認識されるかを確認しましょう。
- メーカーサポート対象外になる: Linuxをインストールすると、当然ながらメーカーのサポート対象外となります。トラブルが発生した際は、自分で情報を調べて解決する必要がありますが、幸いにもLinuxには巨大なコミュニティがあり、インターネットで検索すれば多くの問題の解決策が見つかります。
- 周辺機器の互換性: プリンターやスキャナーなどの周辺機器が、Linux用のドライバーを提供しているか事前に確認しておくと安心です。
まとめ:最適な一台は?
さて、3台のPCを比較してきましたが、最終的にどのPCをLinux化して延命すべきでしょうか。結論は、「使い方」によって変わるとは思います。
データを一元管理したい、サーバー構築に挑戦したいなら → Studio Desktop D540 古いデスクトップPCは、拡張性の高さを活かしたサーバー用途に最適です。少し電気代はかかりますが、あなたのデジタルライフを支える縁の下の力持ちになってくれるでしょう。
快適なメインPCが欲しい、場所を取りたくないなら → ThinkCentre M715q 十分な性能とコンパクトさを両立したこのPCは、Linuxをインストールすることで、最新のPCにも引けを取らない快適なメインマシンとして生まれ変わります。これを選んでおけば、まず間違いないでしょう。
とにかく外に持ち出して使いたい、身軽さが一番なら → CF-RZ5 その圧倒的な軽さは、何物にも代えがたい魅力です。外出先でのライトな作業がメインなら、このPCをLinux化することで最高の相棒になります。タッチ操作という新たな楽しみも待っています。
AIエージェントのセルフホスト版を試せるなら、自宅サーバー用途としてデスクトップPCの Studio Desktop D540が候補に挙がって来ますが、ハードが古すぎるのでスペックが低すぎてちょっと不安です。
メインマシンはすでにWindows11のミニPC(Beelink製)が我が家においては確固たる地位を確立しているため、果たしてThinkCentre M715qをLinux化したからと言って電源を入れることあるだろうかという疑問が残ります(メインPC故障時の一時的なバックアップとして準備しておく、という選択はあるとは思いますが)。
ThinkCentre M715qに関してはファンが静かになるのかも気になるところではありますが、まずLinux化を試すなら、このサイズがコンパクトで外に持ち出して使う機会もあるかもしれないノートPCのCF-RZ5が無難な気がしてきました。
追々実際に試してみてうまく動いたらまた記事として掲載できればなと思います。