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Windows10 PCをDaaSで延命!サポート終了後も安全に使い続ける方法とは?


2025年10月14日にWindows 10のサポートが終了しました。多くの企業や個人ユーザーが、まだ十分に使えるPCの買い替えという大きな課題に直面しています。しかし、そのPC、本当に手放す必要があるのでしょうか?

答えは「いいえ」かもしれません。今回ご紹介する「DaaS(Desktop as a Service)」、すなわち「仮想PCサービス」を活用すれば、お手元のWindows 10 として使っていたPCを、現役として、さらに安全に使い続けることが可能です。

この記事では、DaaSとは何か、その仕組みから具体的なサービス比較、そして新しいPCを購入する場合とのコスト比較まで徹底的に解説します。

サポート終了をピンチではなく、新しいPCライフを手に入れるチャンスに変えましょう!


仮想PCサービス(DaaS)とは何か

DaaS(ダース)とは「Desktop as a Service」の略で、ひとことで言えば「クラウド上にある自分のデスクトップ環境を、インターネット経由で手元の端末に呼び出して使うサービス」です。 これまでPC本体のハードディスクに保存されていたOSやアプリケーション、データがすべてクラウド上のサーバーに集約されます。 利用者は手元のPCやタブレットからネットワークを通じてそのデスクトップ環境にアクセスし、あたかも目の前のPCを操作しているかのように作業ができるのです。

この仕組みにより、手元の端末には高い処理能力が求められません。極端に言えば、画面表示と入力、そしてインターネット接続さえできれば、どんなデバイスでも高性能なPC環境を利用できるのがDaaSの大きな特徴です。

具体的にどういう仕組みなのか

DaaSの核心技術は「デスクトップ仮想化(VDI: Virtual Desktop Infrastructure)」です。 クラウド事業者のデータセンターにある高性能なサーバー上で、ユーザー一人ひとりのデスクトップ環境(OS、アプリ、データ)を仮想マシン(VM)として動かします。

ユーザーが手元の端末(クライアントデバイス)からログインすると、その操作情報(キーボード入力やマウスクリックなど)がインターネット経由でクラウド上の仮想マシンに送られます。仮想マシンはその操作を処理し、結果として描画されたデスクトップ画面だけをクライアントデバイスに転送します。 この画面転送の仕組みにより、手元の端末には実際のデータが一切残らないため、高いセキュリティを確保できます。

このDaaSは、提供形態によって大きく3つに分類されます。

  1. プライベートクラウドDaaS: 企業が自社専用に構築したクラウド環境で提供される形態。セキュリティは非常に高いですが、コストも高くなる傾向があります。
  2. バーチャルクラウドDaaS: AWSやAzureといったIaaS/PaaS上に構築された、自社専用の仮想デスクトップ環境。プライベートクラウドに近いセキュリティとカスタマイズ性を持ちます。
  3. パブリッククラウドDaaS: サービス事業者が提供するクラウド環境を、不特定多数のユーザーで共有する形態。低コストで迅速に導入できるのがメリットですが、カスタマイズ性は低めです。個人利用としてはこれ一択になると思います。

手元のアクセス端末としてはどのような選択肢があるか

DaaSの魅力の一つは、アクセス端末を選ばない柔軟性です。

  • PC: Windows 10サポート終了を迎えたPCはもちろん、低スペックなノートPCや古いデスクトップPCも、パワフルなデスクトップ環境へのアクセス端末として生まれ変わります(ただし、いくら実データがクラウド上にあるとはいえ、サポート終了OSのままアクセス端末として使うのはおすすめはできません。話としてはまだあまり聞かないものの、キーロガーなどを仕込まれて、DaaSアクセス用のID/パスワードを盗まれる可能性もあるのかなと)。
  • 共用PC: ネットカフェやホテルのPCなど、どこからでも、いつものデスクトップ環境を利用できる点も地味に便利です。旅行時の持ち運ぶ荷物を減らしたり、緊急時にも以外と役に立つ場面はあると思います。
  • タブレット(iPad、Androidタブレットなど): 専用アプリを使えば、タブレットからでもWindows環境を操作できます。タッチ操作やペン入力に対応しているサービスもあり、外出先での作業に便利です。
  • スマートフォン: 緊急時のメール確認や簡単なファイル修正など、スマホからでもデスクトップ環境にアクセスできるため、ビジネスの機動性が向上します。

このように、DaaSは「BYOD(Bring Your Own Device)」、つまり個人が所有するデバイスを業務に活用するスタイルにも非常に親和性が高いと言えます。

Windows10のPCはLinux化して、クラウド上のDaaSへのアクセス端末にできるか

結論から言うと、全く問題なく可能です。 むしろ、セキュリティとパフォーマンスの観点から非常に推奨される方法です。

サポートが終了したWindows 10をそのまま使い続けるのは、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなるため、ウイルス感染や情報漏洩のリスクが非常に高まります。 そこで、PCのOSを軽量で無料のLinuxディストリビューション(Ubuntu、Linux Mintなど)に入れ替えるのです。

Linux化したPCは、OS自体がセキュアであることに加え、動作が軽快になるため、古いPCでも快適に動作します。そして、Linux上で提供されているDaaSサービスのクライアントソフトやWebブラウザを利用して、クラウド上のWindowsデスクトップにアクセスします。これにより、ハードウェアはそのままに、安全で新しいデスクトップ環境を手に入れることができるのです。

仮想マシンとしてWindows 10を利用可能か

はい、多くのDaaSサービスで仮想マシンとしてWindows 10を利用することが可能です。 企業の業務アプリケーションの中には、特定のOSバージョンでないと正常に動作しないものが存在します。そういった場合でも、クラウド上にWindows 10環境を維持し、使い慣れたアプリケーションを継続して利用することができます。

特に、Microsoftが提供するAzure Virtual Desktop (AVD) では、Windows 10の延長セキュリティ更新プログラム(ESU)が無料で提供されるため、サポート終了後も安全にWindows 10環境を使い続けることが可能です。 これは、物理PCでESUを有料購入する場合と比較して大きなコストメリットとなります。

仮想マシンとしてWindows 11を利用可能か

もちろん、最新のWindows 11も多くのDaaSサービスで利用可能です。

物理PCでWindows 11へアップグレードする場合、TPM 2.0などの厳しいハードウェア要件を満たす必要がありますが、DaaSを利用すれば手元のPCスペックに関係なく、クラウド上でWindows 11環境を利用できます。 これにより、ハードウェアの買い替えをせずに最新OSの機能やセキュリティを享受できるという大きなメリットがあります。Windows 365やAVDといったMicrosoft純正のDaaSサービスでは、当然ながらWindows 11がサポートされています。

どのようなリスクがあるか

DaaSは多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかのリスクも理解しておく必要があります。

リスク分類 具体的なリスク内容 対策
セキュリティ 不正アクセス、ID/パスワードの漏洩 多要素認証(MFA)の導入、強固なパスワードポリシーの設定、アクセス元のIPアドレス制限。
クラウドサービス自体の脆弱性 信頼性の高い大手ベンダーを選定し、セキュリティに関する認証(ISO27001など)の取得状況を確認する。
端末の紛失・盗難 DaaSは端末にデータを残さないため情報漏洩リスクは低いが、端末自体の認証を強化する(PIN、生体認証など)。
ネットワーク インターネット回線の速度低下や障害による生産性低下 安定した高速なインターネット回線の確保。必要であれば、専用線接続やSD-WANの導入を検討。
オフライン環境では利用できない 一部のサービス(例:Windows 365 Offline)を除き、原則としてオンラインでの利用が前提となるため、業務要件を確認する。
運用・管理 コスト管理の複雑化(特に従量課金制の場合) 利用状況を定期的にモニタリングし、不要なリソースの停止や最適なプランへの見直しを行う。料金計算ツールなどを活用する。
サービス障害時の影響範囲が大きい ベンダーのSLA(Service Level Agreement)を確認し、障害発生時のサポート体制や復旧目標時間を把握しておく。
その他 アプリケーションの互換性問題 事前に利用したいアプリケーションが、仮想デスクトップ環境で正常に動作するか検証(PoC: Proof of Concept)を行う。
周辺機器(プリンター、スキャナーなど)の利用 DaaS環境からローカルの周辺機器が利用可能か、ドライバーの対応状況などを事前に確認する。


仮想PCサービス(DaaS)としてはどのようなものがあるか

DaaS市場は多くのベンダーが参入しており、それぞれに特徴があります。ここでは個人向けから企業向けまで、代表的なサービスを比較してみましょう。特にMicrosoftが提供する「Windows 365」と「Azure Virtual Desktop (AVD)」は、Windows環境を利用する上で中心的な選択肢となります。

  • Windows 365: 「クラウドPC」とも呼ばれる、シンプルさが売りのSaaS型DaaSです。 ユーザーごとに固定の仮想PCが割り当てられ、月額固定料金で利用できます。ITの専門知識が少ない中小企業や、手軽に導入したい場合に適しています。
  • Azure Virtual Desktop (AVD): 旧称はWindows Virtual Desktop (WVD)で、高いカスタマイズ性が特徴のPaaS型DaaSです。 複数のユーザーで1つの仮想マシンを共有できる「マルチセッション」機能により、コストを最適化できます。 柔軟な構成が可能で、VDIに関する知識がある中〜大規模企業向けです。
  • Amazon WorkSpaces: AWSが提供するDaaSで、WindowsだけでなくLinuxデスクトップも選択できるのが特徴です。 月額課金と時間課金の組み合わせが可能で、利用頻度に応じたコスト管理がしやすいサービスです。
  • その他: CitrixやVMwareといった仮想化技術の老舗ベンダーもDaaSソリューションを提供しており、オンプレミス環境とのハイブリッド構成などに強みを持っています。 また、国内ベンダーもさまざまな特色あるサービスを展開しています。

主なDaaSサービス比較表

各サービスの機能や費用を比較してみましょう。費用は2025年10月現在の情報に基づき、1ドル=150円で換算しています。利用条件は、一般的なオフィスワーカー向けのスペック(2vCPU, 8GB RAM, 128GB Storage程度)を想定しています。

サービス名 提供元 特徴 主な機能 月額費用(目安) 課金形態
Windows 365 Business / Enterprise Microsoft シンプルで導入が容易な「クラウドPC」 固定スペック、Webブラウザ・専用アプリからアクセス 7,650円〜 月額固定
Azure Virtual Desktop (AVD) Microsoft 高いカスタマイズ性とコスト効率 マルチセッション対応、柔軟なリソース構成、FSLogixによるプロファイル管理 約5,000円〜 ※1 従量課金
Amazon WorkSpaces Amazon Windows/Linux対応、柔軟な課金体系 月額/時間課金の選択、多様なバンドル(スペック) 約6,450円〜 (月額) / 約2,500円+時間単価 (時間) ※2 月額固定+時間課金
Citrix DaaS Citrix 高度な管理機能とセキュリティ、ハイブリッドクラウド対応 HDXテクノロジーによる快適な画面転送、オンプレミス連携 要問い合わせ サブスクリプション
VMware Horizon Cloud VMware VMware製品との親和性、マルチクラウド対応 マルチクラウド環境への展開、Blast Extremeプロトコル 要問い合わせ サブスクリプション

※1 AVDの費用は、仮想マシン、ストレージ、ネットワークなどのAzureリソース利用料の合計です。利用時間や構成によって大きく変動します。マルチセッションを利用することで一人当たりのコストを抑えることが可能です。 ※2 Amazon WorkSpacesの費用は、選択するバンドルと課金モード(月額 or 時間)によって決まります。


どういう使い方をする人にはどのサービスが合うのか

どのDaaSサービスが最適かは、利用者のITスキル、利用規模、求めるカスタマイズ性によって異なります。

  • IT管理者がいない小規模企業や個人事業主には「Windows 365」が最適

    • 理由: 専門的な知識がなくても、数クリックで「クラウドPC」の利用を開始できます。 料金体系が月額固定で分かりやすく、予算管理が容易な点も魅力です。ユーザー数の増減にも柔軟に対応できます。ただし、個人利用プランはまだ無いようです。
  • コストを最適化したい中〜大規模企業には「Azure Virtual Desktop (AVD)」がおすすめ

    • 理由: Windows 10/11のマルチセッション機能を使えば、複数のユーザーで仮想マシンのリソースを共有できるため、一人当たりのコストを大幅に削減できます。 また、利用時間に応じて課金される従量課金制なので、夜間や休日に仮想マシンを停止することで、さらなるコスト削減が可能です。 ただし、環境構築や運用にはある程度のAzureに関する知識が必要です。
  • 時間単位での利用やLinuxデスクトップが必要な開発者・技術者には「Amazon WorkSpaces」がフィット

    • 理由: プロジェクト単位での短期利用や、特定の時間帯しか利用しないユーザーの場合、時間課金を選択することでコストを抑えられます。 また、AWSが提供する唯一のLinuxデスクトップが利用できるDaaSであるため、開発環境としても有用です。個人利用も可能なようです。
  • 既存のVDI環境からの移行や高度なセキュリティを求める企業には「Citrix DaaS」や「VMware Horizon Cloud」

    • 理由: これらのサービスは、オンプレミスで長年培われてきた仮想化技術をクラウドに拡張したものです。既存のオンプレミス環境と連携したハイブリッド構成や、きめ細やかなセキュリティポリシーの設定、独自の画面転送プロトコルによる快適なユーザー体験などに強みがあります。


注意点

Linux化した端末からDaaSにアクセスした際の日本語入力について

Linux化したPCやタブレット/スマホからWindowsのDaaS環境へアクセスする場合、日本語入力の互換性が気になる点です。

DaaSは手元の端末のOS(この場合はLinux)から、クラウド上のOS(Windows)へキーボード情報を送る仕組みです。そのため、Linux側で日本語入力システム(Mozcなど)がオフになっていれば、キーボードからの入力はそのままクラウド上のWindowsに送られ、Windows側のIME(Microsoft IMEなど)で日本語変換が行われます。

つまり、DaaS利用中はLinux側の日本語入力をオフにし、クラウド上のWindows上で日本語入力をオンにする、という使い方になります。Webブラウザ経由でアクセスする場合も、専用クライアントソフトを利用する場合も、この原則は同じです。各DaaSベンダーもマルチOS対応のクライアントを提供しており、通常はスムーズに動作します。ただし、特殊なキーバインドや入力メソッドを利用している場合は、事前に(かつできれば長期間)トライアルなどで確認することをおすすめします。


費用について新たに物理PCを購入する場合と比較

DaaSの導入を検討する上で最も重要なのが、コストパフォーマンスです。ここでは、新たに同等スペックの物理PCを購入する場合と、3年間DaaSを利用した場合の総所有コスト(TCO)を比較してみましょう。

【前提条件】 * 物理PC: * 本体価格(一般的なビジネスノートPC): 150,000円 * Windows 11 Pro ライセンス: 本体価格に含む * Microsoft 365 Apps for business: 1,284円/月 * セキュリティソフト: 3,000円/年 * 3年間のハードウェア保守・サポート費用: 考慮しない(故障時は別途費用) * 運用管理コスト(キッティング、パッチ適用など): 考慮しない

  • DaaS (Azure Virtual Desktopを想定):
    • 月額費用: 6,000円/月(マルチセッション利用で最適化した средний値)
      • 内訳: Azureリソース利用料 + Microsoft 365ライセンス費用(既存ライセンス流用を想定)
    • アクセス端末: 既存のWindows 10 PCをLinux化して利用(追加費用0円)

【3年間の総所有コスト(TCO)比較】

項目 物理PCを購入 DaaSを利用 備考
初期費用 150,000円 (PC本体) 0円 DaaSは初期のハードウェア投資が不要。
月額費用 1,284円 (M365) 6,000円 AVDの利用料を含む。
年間費用(月額以外) 3,000円 (セキュリティソフト) 0円 DaaSはクラウド側でセキュリティが提供される。
3年間の合計費用 150,000円 + (1,284円×36ヶ月) + (3,000円×3年) = 205,224円 6,000円 × 36ヶ月 = 216,000円 ほぼ同等のコスト。

一見すると、3年間の合計費用はほぼ同等か、DaaSがわずかに高くなるように見えます。クラウドあるあるですが、3年使うとオンプレ買った方が安い、というのがPC用途でも当てはまるようです。

しかし、この比較には「見えないコスト」が含まれていません。

DaaSが持つコスト削減効果(見えないメリット):

  1. 運用管理コストの削減: PCのキッティング(初期設定)、OSやソフトウェアのアップデート、パッチ適用といった情報システム部門の管理業務が大幅に削減されます。
  2. セキュリティ対策コストの削減: DaaSはクラウド側で高度なセキュリティが提供されるため、個別のPCにセキュリティソフトを導入・管理する必要がなくなります。
  3. BCP(事業継続計画)対策: データはクラウド上にあり、端末には保存されないため、災害やPCの故障・紛失時でも、別の端末からすぐに業務を再開できます。
  4. 柔軟性: 従業員の増減やプロジェクト単位での利用に対して、PCの購入・廃棄の手間なく、迅速かつ柔軟にデスクトップ環境を提供できます。

これらの「見えないコスト」やメリットを考慮すると、特に企業での利用においては、DaaSの方がTCOで優位に立つ可能性が非常に高いと言えるでしょう。


まとめ

Windows 10のサポート終了は、単なるOSの世代交代ではありません。それは、私たちの働き方やIT資産の持ち方そのものを見直す絶好の機会です。これまでのように「古くなったら買い替える」というサイクルから脱却し、「今あるものを賢く、長く、安全に使う」という新しい選択肢をDaaSは提供してくれます。

古いWindows 10 PCをLinux化し、DaaSへのアクセス端末として再活用することで、ハードウェア投資を抑えながら、場所に縛られないセキュアで柔軟なワークスタイルを実現できます。 Windows 365の手軽さ、AVDのコスト効率、Amazon WorkSpacesの多様性など、あなたのニーズに合ったサービスが必ず見つかるはずです。

サポート終了を前に、ぜひ一度「PCを買い替えない」という選択肢、DaaSの導入を本格的に検討してみてはいかがでしょうか。それは、単なるコスト削減に留まらず、未来の働き方への大きな一歩となるはずです。